「チョコレートフォンデュの罰ゲームって知ってるかい?」
突然、スピがそんなことを言い出した。
俺は今、スピの住むマンションに居る。
今日は、ATの練習に付き合うって言われて家にまで来たんだ。
「んなの、知るわけねーじゃん。」
そもそも、こんなもの食べたこともねーんだ。知りようもないだろ?
そんなことを言うと、スピはいつものように語り始めた。
「欧米では、チョコレートフォンデュの鍋にマシュマロを落とした人に罰ゲームがあるんだ。」
「ふーん。」
スピは物知りだ。俺の知らないことを沢山知ってる。
それは、思わず感心してしまうのもあったし、どうでも良いのもあった。
「やってみたいと思わないかい?」
「何を」
「この罰ゲームを賭けた、ゲームだよ。同時にマシュマロをチョコに浸けて、
初に落ちた方の負け。」
「へー。面白そうじゃん。いいぜ。」
「きまりだね。」
早速、マシュマロをピックに刺す。
…イチゴやバナナはわかっけど、マシュマロなんか落とすか?
「カズ君」
「ん?」
「 」
マシュマロをチョコの海に浸らせていると、スピがテーブルから身を乗りだし、耳元で囁いてきた。
なんかとんでもねー言葉だった気がする。
「なっ…なっ…!」
「カズ君、落としたよ。」
「な…なんだ…え?」
落としたよ、という言葉に、恐る恐る鍋の中を覗く。
ドロドロのチョコの中に、白いマシュマロが沈んでいた。
驚いてピックを鍋から出したとき、マシュマロを鍋の縁に引っ掛けちまったんだ!
「いや、これは、事故で…っ大体!スピがあんなことするから」
「僕はただカズ君に耳打ちしただけだよ。妨害を禁止した覚えはないしね。」
「ちっくしょー…」
確かに、ルールを確かめなかった俺にも非はあるかもしんねーけどさ。
…なんっか腑に落ちねー。
でも此処でそれを言ったとこで、また言いくるめられちまうだろーなー。スピはそういう奴だから。
「たくっ!…わかったよ。」
「カズ君は素直だね。」
よくもまぁいけしゃあしゃあと。
「で?罰ゲームって何やるんだ?」
「そうだな…じゃあ、カズ君からキスしてくれるかな?」
「え…いやいやいや、それは無理だって。」
「無理かな?」
「無理だっ!」
今までだって片手で数えられるくらいしかしたことないのに!無茶だ!
「だってカズ君、こうでもしなきゃ自分からキスしてくれないだろ?」
「うっ…!」
「それとも、カズ君は僕が嫌い?」
「そ、そんなことねーけど…」
「僕だけ、だなんてフェアじゃない。」
そう言って、スピは笑う。
笑顔は、男の俺でも惚れ惚れするくらい綺麗だった。
テーブルを挟んで、触れるだけのキスをする。
多分、俺の顔は、皿に盛られたイチゴみてぇに赤くなってんだろうな、と思った。
「…よかった。嫌われてないみたいで。」
「好きでもない相手とキスするわけねーだろ。」
「ふふっ、そうだね。」
きっと、どんな勝負でも、俺はスピには勝てないんだと思う。
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オフ友に捧げる。ほのぼの?いいえ、ゲロ甘です。
スピカズなんて書いたの生まれて初めてだわ。どうしましょう。正直、スマンカッタ。
カズ君可愛いですよね。おねいさんそういう子大好き←
スピさんはこういう豆知識沢山知ってそう。イメージ的に。
友人よ、キリリク(?)ありがとう!
2009/05/26 黒野朱鷺PR