なんでまぁこの人は他人の家で意図も簡単に寝れるのか。しかも俺のベッドで。
気を利かせて飲み物を持っていこうと持ってきたグラスは、一瞬で意味を無くしてしまった。
「…はぁ。」
俺は盛大にため息を吐き、持ってきたグラスをテーブルの上に置く。そして元希さんの傍に座った。
静かな部屋に、元希さんの寝息だけが響く。
ふと元希さんを見たら、毛布が掛かってないことに気がついた。そりゃそうだ。毛布は元希さんの下敷きになってるんだから。
「…肩冷やしますよ。」
小声で言ってみたが、勿論反応は無い。
俺はもう一枚毛布を持ってこようと、ベッドの傍から立ち上がった。
「…タ…カヤ…。」
「っ!?」
いきなり呼ばれた名前に驚き、振り向く。でも元希さんが起きた気配は全く無かった。
「…寝言、か。」
元希さんはまた規則正しい寝息をたて、ぐっすりと眠っている。
…しかも少し笑っていた。
「…どんな夢みてんだよアンタ…。」
それでも、元希さんの見る夢の中に俺が居るのは、少し嬉しかった。
「って、そんなことより毛布だ。」
あんな思いに耽っているうちに、最初の目的を忘れそうになる。
肩冷やして投球に影響したら大変だもんな。
俺は階下の押入れから毛布を引っ張り出そうと、自分の部屋を出た。
部屋に戻ると、元希さんがまた寝言を呟いていた。
「…タカ…ヤ。」
「…。」
「タカヤ…。」
「……。」
「タ…カヤ…。」
「………。」
「タカ…ヤ…。」
「…………。」
「タカヤ…。」
何度も俺を呼ぶから、煩くてしょうがない。
本当、一体どんな夢見てるんだよっ。
このままだと永久に呼んでそうだから、試しに元希さんの傍に寄って、その声に答えてやった。
「なんですか、元希さん。」
「ん…。」
急に体がバランスを崩す。そしてそのまま元希さんの腹の上に倒れこんだ。
恐る恐る元希さんの顔を見ると
「作戦成功」
悪戯を成功させた子供のような笑みを、浮かべていた。
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隆也は軽いから腹の上に倒れこんでも平気なんだよ!多分。
ちっとも自重しなくてごめんなさい。
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