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箱豆腐
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非公開
自己紹介:
病名:都会中毒、PC中毒、ゲーム中毒、妄想性

備考:最近ようやく世間慣れしはじめました。

早く大人になりたい一方子供で居たい矛盾で構成されてる。

内向的なので交友関係が狭く浅い。

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「そりゃさ、驚きもしますよ。」
「うん」
「目の前には友人一同。見慣れぬ帽子」
「持っておくもんだよね」
「と言いつつ俺も被っててさ。一斉に取ってみたら」
「ヤバい何これたぎる…!」
「俺もばかたみたいに能天気な奴になりてぇ」
「かくやんキャラ崩壊してるよ」

そこは猫耳パラダイスでした。
なんて、バカなことがあってたまるか!


++2/22のネコ猫パラダイス++



「なんていうか、ゴメンねかたかた」
「え?なんで謝られてるの俺」
「かたかたの仕業だと思ってたんだ」
「俺も」
「僕も」
「満場一致とか酷い!」

自業自得だ。という思いも満場一致だった。
俺たちの頭には小さな三角形が二つ、くっついている。
本物じゃない(本物だったら怖い)。でも外せない。これなんて呪い?

「“外したら爆発します”って書いてあったんだよね。オォ、コワイコワイ」
「まさかの脅しっ!?怖いこの耳怖い!」
「かたかた見てなかったの?」
「いやぁ取説って見るのダルいよねー」
「おはようみんなー…」

俺の同室者、吉井吉良が顔を出す。
相変わらず可愛らしいお顔。生徒会長様が落ちるわけだ。

「おはよう吉井」
「てか吉井も耳が…」
「なんだみんなついてんじゃん。俺だけじゃなくてヨカッター」
「馬鹿言え、俺の同室者にはついてなかったんだからみんなじゃない」
「え」

なんの法則があるんだろう…。
謎だ…。

「ネコだけに猫耳…」

かたかたの言い分は放っておこう。

「吉良、遅刻するから早くしないと…って何これみんな猫耳ついてるじゃん」
「オッス町田きゅん相変わらず美人ナリね!」
「帽子ってことは…」
「俺もだよ。まったくとんだイタズラだよね…」
「迷惑極まりない」
「俺じゃないよ誤解しないでひなたん!あとにっしー便乗しないで!」

日頃の行いが悪いのが悪い。
やっぱり満場一致だった。


++++++++++++++


時は流れてお昼休み。
なんだか教室の人口密度が何時もより低い気がした午前中。帽子を被ってる子も少なくなく、何が起こってるかは明白な気もした。

「あれ?」

何時もの四人に吉瀬、吉井、町田、大河内を加えた大所帯でお昼を囲む…筈のお昼休み。
居るのは俺、かくやん、吉瀬の三人だけだった。

「どうなってるの?」
「あー、えっとな。まず船井。船井はバツ組のえっと…」
「あぁ、理解した」
「籠羽に連れてかれたんだね…ドンマイにっしー」

葛籠羽。にっしーに恋心を抱く後輩で、飽き症だ。飽き性でなく飽き症。
今日は野生児系キャラだったんだろう。第六感が働いて「今日の縁先輩はなんか据え膳な気がするから早退する」とでも言い誘拐した…んだろうなぁ。
一方のにっしーは運動神経0だからあっさり捕まり今は…。


「考えるなおふろさん」
「にっしー…君の勇姿を俺は忘れない…っ!」
「って感じで町田は大河内に、吉井は会長に連れてかれたんだよ」
「猫の日改めて誘拐の日だな」
「三賢はクラス違うから流石に分かんないなー」
「あぁ、想像つくからいいよ」

とメール着信。かたかたからだ。
タイトルはへるぷみ…見なかったことにしよう。

「観察する側からされる側になった三賢鷹見の苦労が偲ばれます」
「良いんじゃないか?本人も好きなんだし」
「あー、休みとかリアル離してくれないらしいからね」
「名前負け先輩マジ絶倫」
「かたかたの勇姿は…放課後には忘れてるかな」
「お前ら三賢には酷いな」
「吉瀬は知らないからな。ばかたの薄情具合を」
「真っ先に逃げるからねかたかたは」

あの機動力をにっしーに分けてあげてほしいくらいだ。


ピンポンパンポーン


『えー、風紀委員会より臨時のお知らせです』
『めんどくせぇなぁったく…』
『ちょっ、委員長だろちゃんと仕事しろふーき!』
『るっせぇ。あー、風紀委員会、委員長の御堂富貴だ。要点だけ簡潔に述べる。一度しか言わねぇからよく聞け。良いか?“誘拐はすんな。放課後まで我慢しろ”…以上だ』


ピンポンパンポーン


「…」
「臨時の注意しなきゃいけないくらいなんだな」
「これからどんどん減ってくのか…」
「そして誰もいなくなった」

なんという推理小説。
そして悪夢の午後が始まるのであった…。

++++++++++++++


放課後。
俺は一人風紀委員会本部に向かう。勿論藍唯さんに会いに行くためだ。
かくやん?あぁ、今日は五限が古典でね。日隅先生に呼び出し、もとい誘拐された。
今頃どうなってるんだろう。考えたくない。

「芙ー露先輩」
「あ、前」
「文面だと名前ってわかんねぇよな」

向かい側から歩いてきたのは足立前。籠羽と同じく後輩だ。
あんな風に告白されちゃって、断った手前気まずい気がするけど、あまり気にしないのが俺ら流。

「先輩も帽子?なんか今日帽子率たけぇな」
「はは…そだね」
「…なんか隠してんの?」
「い、いや?気分だよ気分!」
「…………」

あぁ、前の視線が痛い!
勘と頭が良い前は気がつくかもしれない。視線が頭に集中。ヅラじゃないカツラだ!なんでもない!

「なるほど猫耳か。そういや今日2月22日だったな」
「え?え、あれっ!?」
「す・き・だ・ら・け」

…そうでした、前は反射神経も良いんでした…トホホ…。

「本物?」
「本物だったら怖い」
「ふぅん。取れねぇんだ」
「取ったら爆発するんだよ…」
「じゃああれか、お姫様に掛けられた呪いは王子様のキスで解ける…とか?」

気づけば後ろは壁、前は前の整った顔。
いつの間にか追い詰められた俺は挙動不審、目が泳いでいた。

「お、おとぎ話じゃないかそれ」
「おとぎ話が嘘とは限らねぇよ」
「これは呪いじゃないし」
「…そんなのは建前、据え膳食わねば男の恥、だろ?」
「すえ、据え膳言うな…!」
「ま、もっと恥ずかしい事するからいーけど」

話をまともに聞いていない前をなんとか食い止め、顔を反らす。

「だ、ダメだよ前…!俺には…藍唯さんが…!!」
「バレなきゃ良い、バレても奪う、略奪愛」
「七五調でも耳元で囁いてもダメなのっ!」
「厳密には七五調じゃねぇけど」

そういう問題じゃないー!
ダメだっ…キス…され…っ!




「芙露君!」
「…チッ、タイミング良すぎ…」
「あ、藍唯さんっ!」

藍唯さんが風紀委員会本部の方から走り寄ってくる。
その表情は焦りと驚愕が混じったものだった。
前は前であっさり俺を解放する。
俺は躊躇いなく藍唯さんの元へ走った。

それが前の気持ちを断った俺に出来る誠意。前も分かってること。
だから前は藍唯さんの前ではあっさり身を引くんだ。

「何もされてない?」
「はい、藍唯さんが来てくれたから」
「よかった…遅かったから心配したんだ。こんな可愛らしい耳を付けた芙露君が誰かに連れ去られてないかね。案の定襲われてたみたいだけど」
「襲われて…」
「据え膳食わねば」
「それはもう良いです」
「チッ」

俺を可愛いと言うのは藍唯さんと前くらいだ。
こんな平凡顔を可愛いと言うのだから、伊達食う虫も好き好きって事なのかなぁ。

「…今回は引く。でも大豆島先輩」
「何?」
「テクは俺のが上だから、一度噛まれたら戻れなくなるかもよ?芙露先輩エロい事は初心者だから」
「なっ!何言って」
「だったら守るさ。芙露君には噛みつかせない」
「おーおー勇ましいこって。じゃあな先輩方、よい放課後をー」

ニヤニヤ笑いながら前は去っていく。多分自室に戻るつもりなんだろう。
それにしても…エロい事初心者ってなんだよ…そりゃ、経験豊富って訳じゃないけどさ。

「…芙露君」
「はひっ!なんでしょう藍唯さん!」
「守るから、絶対に」

真剣な声で、真剣な顔で、藍唯さんは俺に誓う。
…何時もは気弱なくせに、こういうときは本当にカッコいいんだから。
だから、好きなんだけど。

「…守られても、良いですかね」
「うん」
「じゃあ、お願いします」
「こちらこそ」

愛しい貴方に触れるだけのキス。
廊下だなんて、誰かに見られるかもしれない場所。
でも、今日は猫の日改め誘拐の日。
どうせ誰も、見てやしない。

「…あの、芙露君」
「はい?」
「猫耳その…か、可愛いね」
「猫耳が、ですか?」
「いや!猫耳つけた芙露君が可愛いんだよ!」
「誘拐します?」
「誘拐…されたい?」
「貴方になら」

あ、両者合意の上じゃ誘拐じゃなくて逃避行?
寧ろ俺が野良猫で、藍唯さんに拾われた?
…それはそれで悪くないかな、なんてね。



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ここは灘城学園、風紀委員会本部。
一人の青年がデスクに向かい書類とにらめっこしていた。
委員は見回りにより不在、委員長に至っては嬉々として騒ぎを収めに行ってしまった。
風紀委員長、御堂富貴は三度の飯よりケンカ好きな男であるので、最早年中行事なのだが。

「だからって俺一人にこの量捌けって言うなよな…」

と呟いたのは風紀副委員長、大豆島藍唯その人だ。
灘城学園の風紀委員会は生徒会ほどではないが仕事が多い。
特に今年度は新設クラス(加害者)と既存クラス(被害者)の(一方的な)衝突が多いため、学園の治安維持が目的である風紀委員会はその対処にてんやわんやなのである。

「失礼します。大豆島先輩いらっしゃいますか…?」
「芙露君?どうしたの?」

控えめなノックの音がして、藍唯が返事を返す。
すると、ドアの向こうから一人の生徒が顔を出した。
高尾芙露。この学園の二年生で、藍唯の恋人である。

「いや、その…お一人ですか?」
「悲しいことにね…」
「ダメですよ手綱離しちゃ…」

とダメ出しする顔は呆れるよりも哀れみよりも、しかたないなぁといった表情だ。
その中には愛しさや慈しみが含まれている。

「面目無いです…」
「俺は藍唯さんのそういうとこが好きなんで、別にいいんですけど」

キュン
藍唯の中でそんな音がした。

「それに、今はそっちの方が好都合というか…」

俺は何時も二人きりの方が好都合だ!と藍唯は心の中で叫んだ。
いつもは富貴7割、芙露の関係者2割、学園内でのトラブル1割に邪魔されるのが通例で、藍唯の堪忍袋の緒はそろそろ切れそうだったりする。
しかし、切れたところで大して怖くないとは富貴の言だ。
根本が善人である藍唯にとって怒りは常に蔑ろにされるものである。

「…ちょうどキリの良いとこまで終わったから、休憩しようと思ってたんだ。芙露君、何か甘いもの持ってないかな?」
「は、はい!」

芙露の手にある可愛らしくラッピングされたものに気がつき、藍唯はソファに座るよう促す。
2月14日、バレンタインデー。
生徒の間でも人気のある富貴は大量のチョコレートを貰っている。
その処理を手伝わされるのは風紀委員会一同。今日もその手伝いを眺めていた藍唯にはピンときたのだ。

その手にある物は、俺に作ってくれた…

「ヤバい…凄く嬉しい…」

コーヒーを淹れながら藍唯は緩む頬を抑えていた。抑えきれていない。
端から見たらただの変質者だ。

「藍唯さん、手伝いましょうか?」
「あ、あぁいいよもう持っていくから。芙露君は座ってて?」

コーヒーを持ってソファまで移動する。
芙露は定位置に座っていた。
三人がけソファの端っこ。遠慮するような詰め方に、藍唯は思わず苦笑いを溢す。

「もっと真ん中に来ても良いのに」
「え?でも…」
「そっち寄ってもいい?」
「わわ…!」

テーブルにはクッキーとコーヒー二つ。
藍唯は早速クッキーを食べることにした。

「手作り?」
「はい…その、キッドとかじゃなくて、小麦粉とかから」
「そうなの?凄いね」
「キッドだとチョコレートが…」
「あ…そっか、ゴメンね」

藍唯はあまりチョコレートを食べない。バレンタインにもチョコレートだけは遠慮している。
去年それを知らずにチョコレートを渡してしまった芙露は大変な目に遭ってしまったのだが、それはまた別の話。

「そんな…!良いんです!俺は全然手間じゃないですから。それに…」
「それに?」
「俺の気持ちがよりいっそ藍唯さんに伝わる気がするんです。大好きって気持ちが、いっぱい」

ドキューン!
藍唯の心は完全に撃ち抜かれた。
衝動的に芙露の唇に自分の唇を重ねる。
触れるだけのキスを何度かした後、ディープキス。
ふと、チョコレートの味がした。
藍唯は芙露の唇をたっぷり堪能した後、名残惜しそうに唇を離した。

「ねぇ…芙露君…」
「ぁ…はい…?」
「…チョコレート、食べたでしょ?」
「あっ…さっきの…」

藍唯がコーヒーを淹れている間、芙露は友人から貰ったチョコレートを食べていたのだ。
もう口には残ってないからと油断していたらこの有り様。芙露は此処に来て後悔した。

藍唯がチョコレートを食べないのは、彼がチョコレート嫌いだから―ではない。
寧ろ藍唯はチョコレートが好きだ。甘いものの中でも一等に好きな物である。

大豆島藍唯は善人である。
善人であるからこそ、溜め込みやすい。
そんな藍唯のストッパーを破壊するのが、好物であるチョコレートだった。

簡単に言うと、藍唯はチョコレートを食べるとエロくなる。
言動行動、それに伴い雰囲気も。

それは普段から抑えている芙露への欲求が大半なのだが、藍唯が抱えるストレスも含まれていたりする。
芙露はそれを分かっているから、何も言わずされるがままだ。

ただ、ここは風紀委員会本部。公衆の場だ。誰が何時帰ってくるかわからない。
せめて藍唯の部屋に!と芙露は願った。
そんな願いも虚しく、藍唯は芙露をソファに押し倒す。芙露は慌てて藍唯を制した。
藍唯は実に不満そうな顔である。

「芙露君…」
「お、俺、部屋が良いです。藍唯さんの部屋…」
「…………」
「あ、藍唯さん?」

何かを考えているらしい藍唯に、芙露は混乱した。
嫌われた、だろうか?と不安ばかりが芙露を支配する。
芙露はその家庭環境から甘え下手のため、ワガママを言うことは苦手だ。
小さなワガママでも、芙露にとっては大きなワガママなのである。

「加減できないよ?」
「え?」

芙露は予想できなかった答えに間の抜けた声を上げてしまう。藍唯はそんな芙露を愛しそうに抱きしめた。

「遠慮無く頂いちゃうから、多分明日は学校無理だよ?」
「えぇ!?」
「俺はそれでもオッケーなんだけど、寧ろ望み通りの展開なんだけど…良いの?」

何時もの藍唯なら絶対に言わないだろう台詞に顔を真っ赤にする芙露。
真っ赤な顔のまま藍唯を抱き締め返し、それをもって藍唯への返事とした。





―媚薬味のバレンタインデーキス―

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