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箱豆腐
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非公開
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病名:都会中毒、PC中毒、ゲーム中毒、妄想性

備考:最近ようやく世間慣れしはじめました。

早く大人になりたい一方子供で居たい矛盾で構成されてる。

内向的なので交友関係が狭く浅い。

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ここは灘城学園、風紀委員会本部。
一人の青年がデスクに向かい書類とにらめっこしていた。
委員は見回りにより不在、委員長に至っては嬉々として騒ぎを収めに行ってしまった。
風紀委員長、御堂富貴は三度の飯よりケンカ好きな男であるので、最早年中行事なのだが。

「だからって俺一人にこの量捌けって言うなよな…」

と呟いたのは風紀副委員長、大豆島藍唯その人だ。
灘城学園の風紀委員会は生徒会ほどではないが仕事が多い。
特に今年度は新設クラス(加害者)と既存クラス(被害者)の(一方的な)衝突が多いため、学園の治安維持が目的である風紀委員会はその対処にてんやわんやなのである。

「失礼します。大豆島先輩いらっしゃいますか…?」
「芙露君?どうしたの?」

控えめなノックの音がして、藍唯が返事を返す。
すると、ドアの向こうから一人の生徒が顔を出した。
高尾芙露。この学園の二年生で、藍唯の恋人である。

「いや、その…お一人ですか?」
「悲しいことにね…」
「ダメですよ手綱離しちゃ…」

とダメ出しする顔は呆れるよりも哀れみよりも、しかたないなぁといった表情だ。
その中には愛しさや慈しみが含まれている。

「面目無いです…」
「俺は藍唯さんのそういうとこが好きなんで、別にいいんですけど」

キュン
藍唯の中でそんな音がした。

「それに、今はそっちの方が好都合というか…」

俺は何時も二人きりの方が好都合だ!と藍唯は心の中で叫んだ。
いつもは富貴7割、芙露の関係者2割、学園内でのトラブル1割に邪魔されるのが通例で、藍唯の堪忍袋の緒はそろそろ切れそうだったりする。
しかし、切れたところで大して怖くないとは富貴の言だ。
根本が善人である藍唯にとって怒りは常に蔑ろにされるものである。

「…ちょうどキリの良いとこまで終わったから、休憩しようと思ってたんだ。芙露君、何か甘いもの持ってないかな?」
「は、はい!」

芙露の手にある可愛らしくラッピングされたものに気がつき、藍唯はソファに座るよう促す。
2月14日、バレンタインデー。
生徒の間でも人気のある富貴は大量のチョコレートを貰っている。
その処理を手伝わされるのは風紀委員会一同。今日もその手伝いを眺めていた藍唯にはピンときたのだ。

その手にある物は、俺に作ってくれた…

「ヤバい…凄く嬉しい…」

コーヒーを淹れながら藍唯は緩む頬を抑えていた。抑えきれていない。
端から見たらただの変質者だ。

「藍唯さん、手伝いましょうか?」
「あ、あぁいいよもう持っていくから。芙露君は座ってて?」

コーヒーを持ってソファまで移動する。
芙露は定位置に座っていた。
三人がけソファの端っこ。遠慮するような詰め方に、藍唯は思わず苦笑いを溢す。

「もっと真ん中に来ても良いのに」
「え?でも…」
「そっち寄ってもいい?」
「わわ…!」

テーブルにはクッキーとコーヒー二つ。
藍唯は早速クッキーを食べることにした。

「手作り?」
「はい…その、キッドとかじゃなくて、小麦粉とかから」
「そうなの?凄いね」
「キッドだとチョコレートが…」
「あ…そっか、ゴメンね」

藍唯はあまりチョコレートを食べない。バレンタインにもチョコレートだけは遠慮している。
去年それを知らずにチョコレートを渡してしまった芙露は大変な目に遭ってしまったのだが、それはまた別の話。

「そんな…!良いんです!俺は全然手間じゃないですから。それに…」
「それに?」
「俺の気持ちがよりいっそ藍唯さんに伝わる気がするんです。大好きって気持ちが、いっぱい」

ドキューン!
藍唯の心は完全に撃ち抜かれた。
衝動的に芙露の唇に自分の唇を重ねる。
触れるだけのキスを何度かした後、ディープキス。
ふと、チョコレートの味がした。
藍唯は芙露の唇をたっぷり堪能した後、名残惜しそうに唇を離した。

「ねぇ…芙露君…」
「ぁ…はい…?」
「…チョコレート、食べたでしょ?」
「あっ…さっきの…」

藍唯がコーヒーを淹れている間、芙露は友人から貰ったチョコレートを食べていたのだ。
もう口には残ってないからと油断していたらこの有り様。芙露は此処に来て後悔した。

藍唯がチョコレートを食べないのは、彼がチョコレート嫌いだから―ではない。
寧ろ藍唯はチョコレートが好きだ。甘いものの中でも一等に好きな物である。

大豆島藍唯は善人である。
善人であるからこそ、溜め込みやすい。
そんな藍唯のストッパーを破壊するのが、好物であるチョコレートだった。

簡単に言うと、藍唯はチョコレートを食べるとエロくなる。
言動行動、それに伴い雰囲気も。

それは普段から抑えている芙露への欲求が大半なのだが、藍唯が抱えるストレスも含まれていたりする。
芙露はそれを分かっているから、何も言わずされるがままだ。

ただ、ここは風紀委員会本部。公衆の場だ。誰が何時帰ってくるかわからない。
せめて藍唯の部屋に!と芙露は願った。
そんな願いも虚しく、藍唯は芙露をソファに押し倒す。芙露は慌てて藍唯を制した。
藍唯は実に不満そうな顔である。

「芙露君…」
「お、俺、部屋が良いです。藍唯さんの部屋…」
「…………」
「あ、藍唯さん?」

何かを考えているらしい藍唯に、芙露は混乱した。
嫌われた、だろうか?と不安ばかりが芙露を支配する。
芙露はその家庭環境から甘え下手のため、ワガママを言うことは苦手だ。
小さなワガママでも、芙露にとっては大きなワガママなのである。

「加減できないよ?」
「え?」

芙露は予想できなかった答えに間の抜けた声を上げてしまう。藍唯はそんな芙露を愛しそうに抱きしめた。

「遠慮無く頂いちゃうから、多分明日は学校無理だよ?」
「えぇ!?」
「俺はそれでもオッケーなんだけど、寧ろ望み通りの展開なんだけど…良いの?」

何時もの藍唯なら絶対に言わないだろう台詞に顔を真っ赤にする芙露。
真っ赤な顔のまま藍唯を抱き締め返し、それをもって藍唯への返事とした。





―媚薬味のバレンタインデーキス―
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