シアワセになるためアナタのシアワセを切る。
私の欲暴のためにアナタのシアワセを奪う。
独りで堕ちていくのは厭なの。
独りでは狂いたくないの。
アナタが欲しいの。
アナタだけが私の全てだから。
アナタ>>>世界が私の方程式よ?
狂え狂えと誰かが言うの。
奪え奪えと心が言うの。
幸を切る交際。コウサイ。幸切。
あいつと居るアナタは嫌い。
その笑顔をあいつに見せないで!
私以外の誰にも見せないで!魅せないで!!
私、知ってるんだから。その笑顔が特別だって。
アナタがあいつを好きだって、知ってるんだから!!!!
両思いだものね。二人で居る時は、とてもシアワセそう。
だから、私はそのシアワセを切りに行くの。
鞄の中の包丁で、切りに行くのよ。
そしてアナタを私だけの物にするの。今からとっても楽しみなの。
駅のホームのアナウンス。“まもなく2番線に電車が参ります。”
この電車はシアワセへの電車、そしてあいつの最期に繋がる。
さぁ電車よ早く来て!待ち遠しいわ。とても、とても!
あのカーブを曲がって電車が来る。早く速くハヤク!
そして電車のライトが見えたとき
後ろから声
“あんたなんかに殺されるわけ無いでしょ?”
“詰めが甘いんだよ、勘違いストーカー女。”
“最期に言っておくけど、拓はもう俺のだから、お前なんかに奪えやしないんだよ。”
“だから、 サ ヨ ナ ラ ”
背中に軽い衝撃。
浮遊感
また衝撃。
周囲の音が遠い。
悲鳴や怒号、全てが遠い。
視界の端には、あいつの―香山琴葉の姿。
無表情の奥の、残酷なまでのエゴイスティックな笑み。
その笑みに、恐怖を覚えた。
そして理解した。
あぁ、こいつは私なんかより、もっとずっと狂ってる。
羽木谷君のためなら、世界を滅ぼす事すら厭わないだろうし、
私を消す事も、罪悪無しにやってのける。
それが、“義務”であるかのように。
眩い光が迫る。
一瞬、私の身に何が起きているのか、私が何処に居るのか判らなかった。
光の方に顔を向ける。
あ
「拓。俺だよ。琴葉。」
「あ…こ、と?」
俺はあいつを始末した後、拓の住むアパートに足を運んだ。
最近はストーカー被害で、まるっきり外に出られなくなった拓。大学も休学している。
その拓のために、食料や生活消耗品を届けるのが俺の役目。
つまり、拓が自分の領域に入れるのを許したのは俺だけ。
それは、嬉しい事。
「入って良い?」
「待って…今部屋ごちゃごちゃだから…。」
「片付け、手伝うよ。」
「いっいいよ!僕片付け得意なんだから!」
また、幻覚が見えて暴れたのかもしれない。
隣人は夜遅くに帰ってくる人だし、他の部屋の人はそもそも知らん振りだろう。
「いーや、拓は偶に片付けるものに埋もれてたりするから危ないじゃないか。」
「そっそんなことないよぉー!!!」
よかった、何時もの拓だ。
「拓、もう大丈夫だよ。」
「?どうして?」
あいつは俺が始末したから…とは言えない。
言ってしまったら…拓が壊れるかもしれないから。
「あいつ…事故ったみたいだし。」
暫くはこないでしょ?と付け足す。
なんとなく、拓が安心してくれた気がした。
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琴拓←ストーカー女話。
琴葉が女を線路に突き落として殺した話です。
最初ここまで続けるつもり無かったんだけどね!
幸切というのはこうさいと読む当て字シリーズの一つです。交際とかけてるようなかけてないような。
因みに拓は大学生、琴葉は専門学校生です。