無理だと解っていた。
でも君は望んだんだ、だから俺は君の望みを叶えようと思うよ。
あぁでも
限界が、あったんだよ。
綾、綾、綾…
ずっと友達なんて、無理だったんだよ。
だって綾は“女”で、俺と希は“男”だ。
異性同士が一緒にいて友達以上にならないなんて、有り得ないだろ?
「なぁ淳。」
「ん~?」
「最近、変じゃないか?」
「何が?」
「…………希…が。」
やっぱりと思った。
本当にお前は友達思いだな…綾。
「あいつ何時も変だろ。」
「そうじゃなくて!……あの日…三人で遊びに行った日から…希が…線引いてる気がするんだ。電話にも出ないし…おばさんに訊いても…部屋に篭もってるって…。」
それはきっと、限界だったんだ。
希も、フリが疲れたんだだろう。
…14年か…長く保ったもんだよ。本当に。
「もう、潮時だろ。」
「…は?」
「なぁ…綾。俺さ、異性同士の友情なんて無いと思うんだ。だから、もう無理だろ。三人一緒なんて。近からず判ったことだ。希も判ったんだろ。無理だって」
「っそんな事無い!!!」
珍しいこともあったもんだ。あの綾が激昂した。怒鳴った。
綾の堪忍袋の緒はそう簡単に切れはしない。それは知ってる。
だからこそ、面食らったんだ。
「じゃあなんだったんだよ!今まで俺のしてきた事は!!なんで…!なんでだよぉ…!!友達で居られないなら…わざわざ男装なんてしなかった…俺だって普通でいたかった…“男であること”が定着して…もう戻れないんだ!!!!!!」
………そうか。
綾は別に、男になりたかったわけじゃなかった。
ただ、俺らと友達になりたかっただけだったんだ。
「綾…。」
嗚咽を漏らす綾の顔をそっと見る。
その顔は
今まで見たどの顔よりも、綺麗だった。
「なっ!淳!?」
「綾…!」
女の子よりかは体格がよくても、所詮女の子。俺には勝てない。
「じゅ…淳!止めろっ!やっ…!!悪ふざけは止せっ!」
「ふざけてなんか、ないよ。俺は綾が……。」
好きなんだ。欲しいんだ。
代替出来ない、唯一のヒト。
愛しているから、友達なんて無理なんだ………。
朝に、なってた。
今日は希を家に呼んでいる。早く綾を家に返さないとな…。
その綾は俺の腕の中で寝息をたててる。
そして、愛しい綾の中に、俺がいる。
なぜだか、虚しくなった。
嬉しい筈だ、体だけでも手に入れられた。心なんて結局あとからどうとでもなる。なのに…情事のときの綾の声が耳から消えない。
「(泣いてたな…。)」
「ん…。」
「あ…綾。」
「……淳…。」
ウサギの様な真っ赤な目が俺を見る。
昨日の悲愴感はなく、なんの感情もない目。
「あ…のさ…俺…忘れるから。」
「は…?」
忘れる?何を、どうして?綾が何を言ってるのか、理解できない。
「淳の気に障ったなら謝る。俺は淳を怒らせたんだろ?なら俺が怒る資格なんか無い。だから…このことは忘れる。」
プツン
何かが切れた音がした。
頭の中が真っ赤になって、言葉が勝手に滑り出して、止まらない。
「ふざけんな!忘れるだと?お前にとっちゃ忘れられる程度の事だってのか!?“友達”に強姦されて平気なのかよっ!!」
「ちがっ…違う!俺はただ…」
「あ、でも最終的にはお前もノってたなぁ?今も動かせばヨくなるんじゃねーの?」
「ひっ、あっ!やっ!待っ…はな…し聞け…っあ!」
少しだ。ほんの少し動かしただけで綾は反応する。
昨日の今日だから直ぐに熱が戻ってくる。綾の否定の言葉は既に無くなっていた。
「綾…好きだ…っ…。」
「俺…も…じゅ…が…好きぃ…!!」
その言葉は、希にも言うのか?
俺と希と、どっちが大事なんだろ…?
「ね…っ…綾は…俺と希…どっちが好き…?」
「そんなっのぉ…決めっらんないっ!」
そうだ。そうだった。
綾は、俺と希の友達になりたかっただけなんだったな。同じくらいか。
体の分だけ俺に片寄ってるけどな。
コンコン
「淳?私だよ、希。」
………希。
…相変わらず時間ぴったりだな。
それまでには綾を返すつもりだったのに…ついつい夢中になってた。
まぁ、いいや。
「のぞ…む?」
「その声…!綾ちゃんも居るの?淳入るよ。」
ドアノブが下に下がる。
ガチャリ
希が絶望するまで、後一秒………。
血染め花嫁-淳-完
やっぱり私にノーマルは無理でしたOTL
なんで長いうえこんな歪んだんだろ…?(自覚しろや)
淳はタガが外れて真っ黒になってしまいました。
さて希はどうなることやら…。
ホラーからはかなり遠のいたよ…。
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