準阿。出会い編
「で、ですね。」
「うん?」
「なんで俺に声かけたんですか?」
10月31日駅前某所。俺は、夏大初戦で負かした強豪、桐青の投手高瀬さんと、ハロウィンの飾りで賑やかな店内で、パンプキンアイスクリームを食べている。
本屋で野球雑誌を眺めていたら、偶然高瀬さんに会った。
「あ、西浦の捕手だ。」
「あ…ちわ。」
「確か…阿部、だよな?下の名前はなんてーの?」
なんで名前を訊かれるのか判らなかったけど、取り合えずは名乗ることにした。
「…隆也…です。」
「隆也、な。」
高瀬さんは、なにやら嬉しそうに笑顔を作っていた。
高瀬さんがますます解らない。
「隆也。下でアイス食べね?今気になる味があって。」
……まさかアイスを食べることになるとは思わなかった。だって高瀬さんとはあの試合以外に接点が無い。
俺はそれが気になって、一緒にアイスを食べるのを了承したのだけど…。
「なんでって…理由がないと声かけちゃいけないのか?」
「別にそういうわけじゃ…。」
「まぁ強いて言えば、興味かな?」
「興味?」
いったい何に興味を抱いたというのか。
「ほら、俺が西浦の投手にボール当てちゃったとき。」
あぁ、あの死球の時か。
「あん時の隆也が頭から離れなくてさ。最初はあの投手と一緒にいたからかって思ってたんだけど、そういう訳でもねぇみたいで。そんな興味。」
「はあ…。」
「なんか、お母さんみたいだなぁって思ってさ。」
確かに前にデカい子供みたいな人の世話をしていたから、世話焼きっていうのか?そんな感じになってる気がする。
泉にも、『阿部ってうぜぇ位世話焼きだよな。』と言われたし、多分俺は世話焼きなんだろう。
じゃあ高瀬さんは、そこに興味を持ったのか…?
「あ、隆也のアイス美味そう。一口いいか?」
「え、あ、はい。」
俺は食べていたカップアイスをスプーンですくい、高瀬さんの方に向ける。高瀬さんの目が少し見開かれたけど、それも一瞬で、高瀬さんは差し出されたアイスを食べた。
「これけっこういけるかも。」
「高瀬さんって甘党なんですか?」
「甘党って言われる程じゃねーけど。甘い物は好きだな。」
「へぇ…。」
「てか高瀬さんじゃなくて準太で良いぞ?寧ろ呼んで?」
高瀬さんは、悪戯を仕掛けた子供の様な笑顔でそんな事を言う。
いきなり名前呼びはやっぱり抵抗があって、呼ぶまでの間が少し開いてしまった。
「…………準太…さん。」
「よく出来ました。」
そう言って撫でた準太さんの手は、あの人とは違うなにかがあった。
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ただ単に私が某32種アイス屋さんでアイスを食べたから思いついたネタ。
無意識にあーんをやる隆也。それに少し驚くぎゅんた。これやりたいが為に書いた。準阿でなく無意識準→阿です。
昨日までには上げるつもりだったんですが…後夜祭が日を跨いでしまいました。
好きです。準阿。でも供給量が無い悲しさ。
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