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箱豆腐
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非公開
自己紹介:
病名:都会中毒、PC中毒、ゲーム中毒、妄想性

備考:最近ようやく世間慣れしはじめました。

早く大人になりたい一方子供で居たい矛盾で構成されてる。

内向的なので交友関係が狭く浅い。

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何故気づけなかったんだろう。

何故自分を抑えられなかったんだろう。

何故友の声に耳を傾けられなかったんだろう。

三人、胸に抱くは後悔の念。

三巴した後悔は、終わりに何を残せるというのか…………?

















ある病院の一室
一人の青年が窓を見つめていた。
何かに思いを馳せるように…―

「………淳。」
「………よぅ希、元気か?」
「それはこっちの台詞だよ。」

ノックも無しに病室に入ってきた青年は、顔つきこそ女性のようだが歴とした男性の姿をしていた。
花瓶に生けてあった枯れた花を捨て花瓶に水を入れる。

「…痛くない?」
「死ぬほど痛い。」
「………そう。そんなに痛くないみたいだね。」

ベッドに座る淳の軽口に希は呆れたように笑う。
自分の持ってきた花を生け、包装紙を捨てた。

「………訴えないんだ。僕のこと。」
「この喧嘩は両成敗だろ。俺もお前も悪い。」
「まぁね。」

淳は自らの怪我を希ではなく強盗の仕業として被害届けを出した。
希にはなんのお咎めも無しだ。
少しの世間話の後、淳は本題を切り出す。

「……………綾は、どうだ。」
「………………落ち着いて聞ける?」
「……あぁ。」

本題とは、淳と希の諍いを目撃した綾の事だ。
綾は諍いを目撃したショックで気絶し、昨日まで意識が無かったのだ。
淳と同じ病院に搬送されたのだが、淳は今医者から絶対安静の通告を受けており出歩けなかった。だから希からの報告が、綾の現状を知る手がかりだったのだ。

「……綾…さ、記憶無くしちゃったみたいで、僕らのこと全く覚えていなかった。医者に言わせれば忘れたいことを忘れているんだとか。」
「………その方が楽だもんな。」
「一応、今までの学習は記憶してた。要は…」
「………俺らのこと、忘れたいことだったんだな…。」
「……うん…。」

希が寂しそうに肯定する。
何よりも友情を大切にする綾だから、友人二人を失ったショックは大きい。

「希は…綾と話したか?」
「まさか、出来ないよそんな事。僕も綾を傷つけたんだし…そんな資格無い。……でもね…綾…笑ってた。家族に囲まれて…何も知らない純粋な子供みたいに…笑っていたんだ。」

だから、辛くはないよと希は笑った。

「希…俺さ………」









「綾に告白しようと思う。」

淳は、希に刺されたとき言いかけていた言葉を言った。
一瞬の沈黙の後、希は淳に笑顔を向ける。目は怒気を滲ませていた。

「……………へぇ。凄いじゃない。あれだけのことした責任?」
「あぁ…。」

責めるような声音が淳に向かう。
それはすべてを凍らせるような凄まじい怒気だった。
しかし淳は怯まずに続ける。

「自分でも身勝手だと思う。あれだけ酷いことをして、どこかで許されようとしている。でもその分の責任は取りたいし何より…好きだから。俺、もう綾とは友達に戻れない。無理なんだよ。だから俺は、綾に告白しようと思う。」

その時、希の脳内であの時の場面が再生された。

あの時の淳はどんな顔をしていたっけ
こんな苦しそうな、辛そうな、悔しそうな顔をして…
そうだ、あの時淳は自分の腕に爪立ててなかったか?
あれは確か…そう、淳が昔自分のせいで母親が死んだと話した時にやっていた癖。自分を責めているとき無意識にやる癖みたいなやつだ。
自責の念から来る自己を罰する行為、自傷行為。

何より、僕はこの発言を聞いていた筈なんだ。今更になって脳が認識する。
しっかりとした声で―――こくはくすると。

あ、そうだよ。淳ってこんな奴だ。
やってる最中はドライヴァーズハイになって変に狂ってるのに、終わったら激しく後悔するような………単純馬鹿。
そのくせ責任感は強くて強くて…


そんな淳が、僕は綾と同等の好意を持てる唯一の男友達だった……!!!




「あのとき…それを言おうとしてたの?」
「…………。」
「……馬鹿だなぁ淳は、あの時僕がおかしくなってたの、目を見てればわかっただろ?何言ったって無駄だったのに…。」
「それも…俺の罰なら受けるしかないだろ。」

それを聞いて希は判った。
欲望に狂った自分を助けてくれたのは、紛れもなく淳だということに。
奈落の底に落ちてしまった自分を引き上げてくれたのは、淳だったということに。
それを無碍にした愚か者は…自分だということに…。


「ごめん淳…ごめん…ね…っ…!」

希は泣き崩れた。それは、淳の気持ちを知った希の後悔だった。

「なっなんだよいきなり。俺もお前も、互いに自分を許しただろ?」
「僕…淳を心から許してなかった…!まだ心の何処かで淳を恨んでた…友達なのに信頼できなかった…!!!」
「…しょうがねぇよ。火種は俺なんだから。」

淳は笑顔を作り、希の頭を撫でる。

「また…やり直したいね…。ムシの良い話だけど、最初から…せめてあの夏の日…僕らが三人で遊びに行った日に。」
「……そう…だな…。」
「淳と綾が仲良いからって、拗ねてた僕を叱りたい。待ってるだけで変わるほど、甘い世の中じゃない!って言ってやりたい。」
「俺は…いい気になって希をほったらかすなって言いたいな…あと自分を抑えろ。」
「はは…何それ…」

希の涙も程々に収まった頃。部屋にドアを控えめにノックする音が響く。
淳がどうぞと入室を了承すると、そこにいたのは―――





「……綾…?」
「綾!?」
「ひゃっ!」

希が椅子から勢い良く立ち上がったことと淳の驚いたように出した声が、ドアを開けた小柄な少年にも見える少女を驚かす。

「ししっ失礼しましたっ!!!まっ間違えてしまいましたでござるよいよいよさこいっ」
「待って綾!」
「何か激しく混乱してる綾!待てって!!」

あまりにも驚いてしまい、逃げようとした綾。
希は綾の首根っこ捕まえ病室に引きずり戻した。

「で、用は何?」
「あ、あの…ハンカチ…届けに。てかなんで私の名前を…?」
「わ…わた…!!」
「えっと…そうだ!僕ら近所なんだよ!君お向かいの片瀬綾ちゃんでしょ?」
「そうですけど…ん~…ごめんなさい。思い出せません…。私記憶喪失みたいで…。」

綾の声、綾の顔、綾の仕草。
それらはすべて本物で、淳に違和感をもたらした。

「あ、名前聞けば思い出せるかも…。」

綾がそう呟いたとき、二人は不意に、先程の会話を思い出した。

『また…やり直したいね…。ムシの良い話だけど、最初から…せめてあの夏の日…僕らが三人で遊びに行った日に。』
『……そう…だな…。』
『淳と綾が仲良いからって、拗ねてた僕を叱りたい。待ってるだけで変わるほど、甘い世の中じゃない!って言ってやりたい。』
『俺は…いい気になって希をほったらかすなって言いたいな…あと自分を抑えろ。』
『はは…何それ…』




やり直せる…かな。
希は考え、小さな声で呟く。
やり直そう。
淳は答えた。






そう、これは新たなスタートだ。
俺の罪は消えない。一生、絶対に。
でも、だからもう…俺は綾を傷つけない。
もし君が危険な目に遭ったなら俺が君を守ろう。
もし君が辛いのなら俺も一緒にその辛さを背負おう。
もし君を傷つける何かが君の目の前に現れたら、俺が何かを排除しよう。
それでももし、君が傷ついてしまったら…俺が君を癒してあげる。

だから
やり直しても…良いですか?
もう一度、側にいても…良いですか?















「僕は希、平高希。よろしくね。」
「…高梁淳だ。よろしくな、綾。」











血染め花嫁-三巴-開始





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