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カルテ
HN:
箱豆腐
性別:
非公開
自己紹介:
病名:都会中毒、PC中毒、ゲーム中毒、妄想性

備考:最近ようやく世間慣れしはじめました。

早く大人になりたい一方子供で居たい矛盾で構成されてる。

内向的なので交友関係が狭く浅い。

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拍手、詳しいプロフ、本館への道
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オリジキャラ、作品世代表
タイトルは箱さんが識別するために適当につけたものも有り。

零世代(第三第四世代の親世代)
空見先輩と世界征服を目論む後輩君


第一世代(1990年くらいを目安、ポケベル、公衆電話主体、第三第四世代の親世代がもうちょい上)
知ってか知らずか

第二世代(2005年くらい、携帯普及率高め)
青春暴走☆マシンガン

(寿衣と扇香のラブ無し高校時代)

(Suiがモデルとしてデビュー)
(ゴッズがメジャーデビュー)
第三世代(2008年くらい、携帯の進化がパネェ)
絹郷1、灘城F、色無

(Cosmoデビュー)

(まじみらがこのあたりで放送開始)
第四世代(第三世代より少し後、スマホが珍しい世代)
御伽、灘城Sec、※この学、腐り眼鏡、コロ転

第五世代(上の少し後、スマホ普及世代)
女王×姫、絹郷2、りくじら、ステレオタイプナウ、アフターステレオタイプナウ

 

空見先輩と世界征服を目論む後輩 先輩17歳2年生 後輩13歳中2

8年後

空見先輩25歳。六月世代がこの年爆誕。

2年後

知ってか知らずか 14歳 空見2歳

10年後

青春暴走☆マシンガン 飛鳥2年

5年後

絹郷1 楽1年 潮3年

灘城fir 深白2年 渡良瀬1年
カラーレスブラッド 幸也 2年

2年後

御伽学園シリーズ-フェーズ1:灰かぶり 沓掛2年
     〃     -フェーズ2:白雪姫  木崎1年
     〃     -フェーズ3:竹取物語 富士野2年

灘城Sec 芙露2年 深白2回生
※この小説は王道学園物BLです 続嬉1年 紅韻1年
腐女子の色眼鏡、俺らの恋眼鏡  真箏 中3年
コロン☆転ん 弥彦1年

女王×姫 容1年 紅韻2年
絹郷2 縫2年
陸に上がったクジラの話 アス君1年
ステレオタイプナウ 委員長2年(4月~7月)
アフターステレオタイプナウ 監査1年(9月~)



 

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年表(『』は番外編として外側で書く予定は未定の希望型)
大戦辺りは適宜変更。年齢は目安程度に。
これである程度固定します。ぶれないようにぶれないように。


サティが初恋の人と出会う
『死期を彩る四季と踊る』

(云百年後)

リン子爆誕、育ての兄に拾われる

(5年)

リン子、師匠に師事する

(1年)

リン子6歳。大戦に徴兵

終戦

(1年)

リン子7歳。禁書でサティ召喚契約

(4年)『可愛い盛り』

リン子11歳。夜盗を惨殺
サティ豹変。

(3年)

リン子14歳、旅立ち

(2年)

レックス、デュードの旅に同行



「サティス、サティス」
「なんだ?」
「この草は食べれる?」
「おいおいそりゃ猛毒だぜ?毒薬にも使われてる」
「…サティスと居ると楽しいね」
「へ?」
「サティスは楽しい?」
「たのし…い?」
「……いや?」
「止めろ、そんな目で見るな」
「僕と居るの、やだ?」
「…だーかーらー…んな捨て犬みたいな目ぇすんな。嫌じゃねぇから」
「ほんと?」
「ほんと」
「そっか、えへへ」

↓その後↓

「サティスって基本おまけなんだって知ってた?」
「聞きたくねぇし知ってる」
「おまけ(笑)死神(失笑)」
「お前本っ当に可愛い気無くなったな」
「可愛い気なんて海に捨てたよ」
「もう溶けて消えたな」
「泡になって消えました」
「生意気な部分を刺せば良かったんだなクソッ!やられた!」



王冠へと至る見つめる少年の道

ある日白い襟の服を着た少年は旅に出た
狂喜の画家は右手に筆を取りただそれを見送った
彼は、罪深きジキルとハイドを従え進む
そしてバーゼルの狂犬が永遠の眠りにつく時
金色の輝く王冠を頂いた少年が其処に佇むだろう。


 

「…なんだこれ」

監査君が朝起きると謎の手紙が届いていました。
どうやら怪文章のようですが…

「どうしろって言うのさ…」

裏面には“今日中にこの謎を解かなければ、貴方の秘密をバラします”と書かれていました。ただの脅し文句です。
監査君はどうすべきが考えました。そして、考えに考えて…


「差出人が気になるし、調べてみよう」

こうして、監査君の大冒険は幕を切ったのでした。





「委員長」
「今は委員長じゃないよ」
「失礼、鴻先輩。それと元会計さん」
「おはよー監査君。因みに名前覚えてる?」
「おはようございます。えっと、寡黙の寡に櫛で、寡櫛先輩ですよね」


最初に会ったのは元選挙管理委員会委員長と元生徒会会計さんでした。
この二人はある事件をきっかけに急速に仲良くなったのですが、ここでは割愛。
談話室で二人イチャイチャしてるところを監査君は“この二人に恋愛感情が無いなんて色々詐欺だ”なんて思いながら声をかけてみたようです。


「今日はあやとりですか」
「うん」
「意外と奥が深いよねーこれ」
「それはそうと委員長」
「なに?」
「これ、何だから分かります?」
「暗号?」
「みたいです」
「…俺に聞くより生徒会の誰かに聞いた方がいいんじゃないの?さっき向こうに庶務が居たし、聞いてみなよ」
「庶務さん、ですか…。分かりました。ありがとうございます」

意外や意外。監査君の敬愛する委員長でも分からないことがあるようです。
監査君は委員長の指さす方向に歩を進めることにしました。

 

 

「庶務さん」
「…あぁ、監査君。おはよ」
「おはようございます」
「敬語抜けないねー」
「ですねー」

委員長の言うとおりに進むと、庶務さんがのんびりと歩いていました。
これから自室に戻るところなのでしょう。のんびりながらも足取りは軽やかです。
庶務さんは監査君が生徒会の中でも身近に感じる存在です。
監査君は早速、例の暗号文を庶務に見せてみました。
庶務さんは暗号文を受け取り斜め読みします。

「この文章?」
「はい」
「んー…俺もちょっとわかんないな。書記に聞いてみたら?」
「書記さんですか」
「こういうの得意だって聞いたよ」

苦笑い気味に暗号文を返す庶務さんは自分の歩いてきた方とは逆方向を指さします。
庶務さんにお礼を言って、監査君は書記さんに会いに行きました。
けれど監査君は気がつきませんでした。
庶務さんがものすごくあくどい笑みで監査君の背中を見ているのを…。

 

 

学園寮の一角にある自販機エリア。
書記さんはそこで飲み物を買っていました。

「書記さん」
「…監査」
「おはようございます」
「ん…はよ…」

書記さんは眠たげに、でも何時も通り言葉少なに答えました。
口数の少なさで右に出る者はいません。

「なんか…用?」
「何か用がないと話しかけちゃいけませんか?」
「別に…用件しか言わない…事務的な人間なの…知ってるから…」
「そんなつもりはないんですけど…これ、分かります?」

書記さんは口下手だから口数が少ないのではありません。
口を開けば毒を吐く毒舌人間なのです。
監査君は書記さんに例の暗号文を見せました。
書記さんは素直に受け取り、文章に目を走らせます。

「…これ?」
「はい」
「こんなの…最初から会計に聞きに行けばいい話だろ…?なんで…わざわざ俺に言うんだよ…。人に言われたことしか出来ないの…?」
「あー…まぁ、そうなんですけど。」
「…ゴメン」
「気にしてませんよ」

毒舌な書記さんですが、中身は誰よりも優しく、自分の毒舌で人を傷つけることを何よりも恐れています。
だから何時でも黙して語らないのです。誰も傷つけないために。
それを理解してる監査君は傷ついた素振りすらせず書記さんにお礼を言い、ある場所に向かいました。

 

 

学園寮内学習室。
学園でも利用者の少ないこの部屋に、監査君の目的の人物は居ました。

「会計さん」
「あれ?かーんさ君じゃん。おーはよ!」
「おはようございます」
「どしたの?こんな過疎地に来るなんて珍しいじゃない」

寮内学習室の窓側、一番奥の角のスペース。
何時もの定位置に会計さんは居ました。
机にはノートと参考書があり、お勉強してたのが窺えます。

「お邪魔でした?」
「うーうん。休憩なう」
「そうですか。ちょっと訊きたい事があって」
「何々ー?」

これなんですけど、と監査君は会計さんに暗号文の書かれた紙を手渡しました。
会計さんは受け取った紙をじっくりと読み、裏返したりもして一通り観察します。
回転椅子を回す度、ゆらりゆらりとピアスが揺れて、監査君の視界に入りました。

「どうでしょう会計さん」
「…さしもの俺でも、こういうクイズとか暗号はジャンル外なんだよねー」
「意外です」
「意外?」
「頭が柔らかいってイメージがあったんで」
「俺四角四面なんだよねー。杓子定規っていうかー」
「なるほど」
「ふくかいちょーに訊いてみなよー。俺より頭やらかいからさー」
「副会長さんに、ですか?」

監査君は副会長さんを頭に思い浮かべます。
しかし、監査君の頭に居る副会長に頭が柔らかいというイメージはあまりありませんでした。

「人は見かけによらないっていうじゃない?だから試しに訊いてみれば良いよぉ」
「はぁ…」
「今なら多分中庭に居るんじゃないかなー?」

学園寮の中庭はあまり生徒には知られていない日当たりスポット。
寮内学習室も過疎地ですが、それを超える過疎具合、それが学園寮の中庭です。
監査君は会計さんにお礼を述べ、とりあえず中庭に向かう事にしました。

 

 

寮から出て中庭に向かう監査君。
正直半信半疑だった監査君ですが、会計さんの言うとおり中庭には日向ぼっこしている副会長さんが居ました。

「…監査か…じゃない、監査君ですか」
「はい、おはようございます。すいません日向ぼっこ中に」
「いえ…構いませんよ、どうしましたか?」

寝転がりながら丁寧な物腰で対応してくれる副会長さん。
そのギャップに、監査君は何時も驚かされています。
前副会長の狡賢い・狡猾という印象とは対照的な、優しくも不器用な印象を持つ副会長に、同じ委員会だった先輩を思い出す監査君。
庶務さんの次に親近感を持つ人でした。
監査君は副会長さんの隣に座り、やっぱり例の暗号文について訊いてみます。

「これなんですけど…何か分かりませんかね?」
「暗号…ですか」
「えぇ」
「…駄目ださっぱりわかんねぇ…じゃない、分かりません。」
「…無理しなくて良いですよ副会長さん」

副会長さんは元々丁寧さという言葉とは無縁な人間でした。
副会長になるに際して自己を振り返り、今までの言動では生徒たちに示しがつかないと思った副会長さんは、こうして自己改革に腐心しているのです。
就任から半年経ちますが、生来の性格というのは中々矯正しづらいもの。
今でこそ物腰の柔らかさが板についてきていますが、ときたまぶっきらぼうで粗野な面が出てしまうのは仕方なしと言ったところです。

「すいません、お役に立てなくて」
「いえ、考えてくれただけでもありがたいですよ。ありがとうございます副会長さん」
「あぁ、どういたしまして。…あ、会長ならもしかして…」
「会長ですか」
「今なら自室に居らっしゃると思いますよ?」

 

 

「というわけで最後の砦、会長までやってきました」
「いらっしゃい監査君」
「おじゃまします会長」
「ゆっくりしていってね!」

監査君は副会長さんの言うとおりに生徒会長さんの部屋にやってきました。
会長さんはにっこりと人好きする笑顔で迎えてくれてます。

「それで会長、本題なんですが」
「それよりお茶しない?美味しい紅茶を貰ったんだ」
「え、まだ昼前…」
「飲むだけなら別に平気でしょう?」
「まぁ、そうですけど」
「じゃあ決まり。用意するからちょっと待っててね」
「えー…分かりました」

何やら強引に押し通され椅子に座らせられる監査君。
会長さんはいそいそとティーセットを出しています。

「ミルクは要るかな?」
「ストレートでお願いします」
「了解」

お湯を沸かしながら手際よく茶葉を淹れる会長さん。
監査君はその缶に見覚えがありました。
けど、あまりにおぼろげな記憶だし確証も無しに指摘するのは失礼かな、と監査君は違和感を無視します。
その違和感は実際当たってて、お茶しようなんて言うのは監査君を引き留める大義名分でしかないというのは会長さんしか知りません。

「どうぞ」
「ありがとうございます。いただきます」

目の前に出された紅茶からを良い香りが漂ってきます。
紅茶が好き、というわけではない監査君。そんな監査君の記憶の中でも会長の淹れる紅茶はぴか一の美味しさです。

「…やっぱ会長の淹れるお茶って美味しいですね。」
「そう?そう言ってもらえると嬉しいな」
「ふー…」
「おかわりあるよ」
「…いやいや、そうじゃなくて」

じゃあお言葉に甘えて…なんて言葉が口に出る前に監査君は本来の目的を思い出しました。
今日中に謎を解かなければ監査君の秘密を暴露される可能性があるのです。
差出人が誰かとか、自分でもどんな秘密だろうとか、気になるところではありますが、秘密というくらいですので暴露されたくないことに決まってます。
不安の芽は早めに摘み取っておくに限る、と監査君は思いました。

「この暗号のようなものなんですが…」
「暗号、ね…」

会長さんは監査君から暗号文の書かれた紙を受け取り、目だけを動かし読みました。
少し考える素振りをしてから唐突に、監査君を見つめる会長さん。
驚いたのは監査君です。

「会長?」
「知りたい?」
「え?…えぇ、是非」
「そう…じゃあ、教えてあげる」

会長さんは紙を床に投げ捨て監査君に近寄ります。
監査君はその行動に疑問を持ちましたが、口にしようとした時には既に会長さんとの距離は殆どありませんでした。

「かい、ちょう?」
「よーく、よーく…聞いてね?」
「は、はい」
「あれはね…」

会長さんの顔が監査君の耳元に近寄ってきます。
女の子がされたらきっと一発でメロメロです。しかし悲しかな監査君は立派な男子。メロメロよりも先に困惑と緊張が芽生えます。
耳に息がかかり、監査君は身を竦ませました。そんな監査君の様子を見て会長さんは嬉しそうに口元を歪め、答えを口にしようとします。


その時


そんな状況を嘲笑うかのように、レトロな機械音が部屋を埋め尽くしました。
黒電話の着信音。監査君の携帯電話でした。
監査君は慌てて電話の相手を確認します。

「あ、委員長から電話だ」

相手は朝一番に会った委員長さんでした。

「委員長…またお前か…」

そんな呟きも監査君の耳には入りません。
監査君はそそくさと電話に出ます。

「もしもし、委員長ですか?」
『反応速度が遅くなったね』
「俺はライト信者ですから。で、どうかしました?」
『他の委員は未だに3コール以内だよ。特に用はないけど、暗号解けたかなって』
「それが…今会長とお茶してて」
『どうしてそうなった』
「さぁ…?」
『まぁいいや。ねぇ、会長君に代わってくれない?ちょっとお話があるんだ』
「え?いいですけど…」
「どうしたの?監査君」
「委員長が会長に代われと」
「俺に?ちょっと待ってね…はい、お電話代わりました…」

ケイタイを持ってリビングから出てしまった会長さん。
監査君にはその会話は聞こえません。
残された監査君は一人、リビングを見回します。
ふと、監査君の目にカレンダーが止まりました。
三月のままのカレンダー。しかし、今日から暦が変わっていたような…?
違和感を覚えた監査君でしたが、部屋の主が居ないのに勝手に部屋の物を弄るのは些か抵抗がありました。

 

今日が別名何の日か。監査君が気付いたのは午後になってからでしたとさ。


 

「そりゃさ、驚きもしますよ。」
「うん」
「目の前には友人一同。見慣れぬ帽子」
「持っておくもんだよね」
「と言いつつ俺も被っててさ。一斉に取ってみたら」
「ヤバい何これたぎる…!」
「俺もばかたみたいに能天気な奴になりてぇ」
「かくやんキャラ崩壊してるよ」

そこは猫耳パラダイスでした。
なんて、バカなことがあってたまるか!


++2/22のネコ猫パラダイス++



「なんていうか、ゴメンねかたかた」
「え?なんで謝られてるの俺」
「かたかたの仕業だと思ってたんだ」
「俺も」
「僕も」
「満場一致とか酷い!」

自業自得だ。という思いも満場一致だった。
俺たちの頭には小さな三角形が二つ、くっついている。
本物じゃない(本物だったら怖い)。でも外せない。これなんて呪い?

「“外したら爆発します”って書いてあったんだよね。オォ、コワイコワイ」
「まさかの脅しっ!?怖いこの耳怖い!」
「かたかた見てなかったの?」
「いやぁ取説って見るのダルいよねー」
「おはようみんなー…」

俺の同室者、吉井吉良が顔を出す。
相変わらず可愛らしいお顔。生徒会長様が落ちるわけだ。

「おはよう吉井」
「てか吉井も耳が…」
「なんだみんなついてんじゃん。俺だけじゃなくてヨカッター」
「馬鹿言え、俺の同室者にはついてなかったんだからみんなじゃない」
「え」

なんの法則があるんだろう…。
謎だ…。

「ネコだけに猫耳…」

かたかたの言い分は放っておこう。

「吉良、遅刻するから早くしないと…って何これみんな猫耳ついてるじゃん」
「オッス町田きゅん相変わらず美人ナリね!」
「帽子ってことは…」
「俺もだよ。まったくとんだイタズラだよね…」
「迷惑極まりない」
「俺じゃないよ誤解しないでひなたん!あとにっしー便乗しないで!」

日頃の行いが悪いのが悪い。
やっぱり満場一致だった。


++++++++++++++


時は流れてお昼休み。
なんだか教室の人口密度が何時もより低い気がした午前中。帽子を被ってる子も少なくなく、何が起こってるかは明白な気もした。

「あれ?」

何時もの四人に吉瀬、吉井、町田、大河内を加えた大所帯でお昼を囲む…筈のお昼休み。
居るのは俺、かくやん、吉瀬の三人だけだった。

「どうなってるの?」
「あー、えっとな。まず船井。船井はバツ組のえっと…」
「あぁ、理解した」
「籠羽に連れてかれたんだね…ドンマイにっしー」

葛籠羽。にっしーに恋心を抱く後輩で、飽き症だ。飽き性でなく飽き症。
今日は野生児系キャラだったんだろう。第六感が働いて「今日の縁先輩はなんか据え膳な気がするから早退する」とでも言い誘拐した…んだろうなぁ。
一方のにっしーは運動神経0だからあっさり捕まり今は…。


「考えるなおふろさん」
「にっしー…君の勇姿を俺は忘れない…っ!」
「って感じで町田は大河内に、吉井は会長に連れてかれたんだよ」
「猫の日改めて誘拐の日だな」
「三賢はクラス違うから流石に分かんないなー」
「あぁ、想像つくからいいよ」

とメール着信。かたかたからだ。
タイトルはへるぷみ…見なかったことにしよう。

「観察する側からされる側になった三賢鷹見の苦労が偲ばれます」
「良いんじゃないか?本人も好きなんだし」
「あー、休みとかリアル離してくれないらしいからね」
「名前負け先輩マジ絶倫」
「かたかたの勇姿は…放課後には忘れてるかな」
「お前ら三賢には酷いな」
「吉瀬は知らないからな。ばかたの薄情具合を」
「真っ先に逃げるからねかたかたは」

あの機動力をにっしーに分けてあげてほしいくらいだ。


ピンポンパンポーン


『えー、風紀委員会より臨時のお知らせです』
『めんどくせぇなぁったく…』
『ちょっ、委員長だろちゃんと仕事しろふーき!』
『るっせぇ。あー、風紀委員会、委員長の御堂富貴だ。要点だけ簡潔に述べる。一度しか言わねぇからよく聞け。良いか?“誘拐はすんな。放課後まで我慢しろ”…以上だ』


ピンポンパンポーン


「…」
「臨時の注意しなきゃいけないくらいなんだな」
「これからどんどん減ってくのか…」
「そして誰もいなくなった」

なんという推理小説。
そして悪夢の午後が始まるのであった…。

++++++++++++++


放課後。
俺は一人風紀委員会本部に向かう。勿論藍唯さんに会いに行くためだ。
かくやん?あぁ、今日は五限が古典でね。日隅先生に呼び出し、もとい誘拐された。
今頃どうなってるんだろう。考えたくない。

「芙ー露先輩」
「あ、前」
「文面だと名前ってわかんねぇよな」

向かい側から歩いてきたのは足立前。籠羽と同じく後輩だ。
あんな風に告白されちゃって、断った手前気まずい気がするけど、あまり気にしないのが俺ら流。

「先輩も帽子?なんか今日帽子率たけぇな」
「はは…そだね」
「…なんか隠してんの?」
「い、いや?気分だよ気分!」
「…………」

あぁ、前の視線が痛い!
勘と頭が良い前は気がつくかもしれない。視線が頭に集中。ヅラじゃないカツラだ!なんでもない!

「なるほど猫耳か。そういや今日2月22日だったな」
「え?え、あれっ!?」
「す・き・だ・ら・け」

…そうでした、前は反射神経も良いんでした…トホホ…。

「本物?」
「本物だったら怖い」
「ふぅん。取れねぇんだ」
「取ったら爆発するんだよ…」
「じゃああれか、お姫様に掛けられた呪いは王子様のキスで解ける…とか?」

気づけば後ろは壁、前は前の整った顔。
いつの間にか追い詰められた俺は挙動不審、目が泳いでいた。

「お、おとぎ話じゃないかそれ」
「おとぎ話が嘘とは限らねぇよ」
「これは呪いじゃないし」
「…そんなのは建前、据え膳食わねば男の恥、だろ?」
「すえ、据え膳言うな…!」
「ま、もっと恥ずかしい事するからいーけど」

話をまともに聞いていない前をなんとか食い止め、顔を反らす。

「だ、ダメだよ前…!俺には…藍唯さんが…!!」
「バレなきゃ良い、バレても奪う、略奪愛」
「七五調でも耳元で囁いてもダメなのっ!」
「厳密には七五調じゃねぇけど」

そういう問題じゃないー!
ダメだっ…キス…され…っ!




「芙露君!」
「…チッ、タイミング良すぎ…」
「あ、藍唯さんっ!」

藍唯さんが風紀委員会本部の方から走り寄ってくる。
その表情は焦りと驚愕が混じったものだった。
前は前であっさり俺を解放する。
俺は躊躇いなく藍唯さんの元へ走った。

それが前の気持ちを断った俺に出来る誠意。前も分かってること。
だから前は藍唯さんの前ではあっさり身を引くんだ。

「何もされてない?」
「はい、藍唯さんが来てくれたから」
「よかった…遅かったから心配したんだ。こんな可愛らしい耳を付けた芙露君が誰かに連れ去られてないかね。案の定襲われてたみたいだけど」
「襲われて…」
「据え膳食わねば」
「それはもう良いです」
「チッ」

俺を可愛いと言うのは藍唯さんと前くらいだ。
こんな平凡顔を可愛いと言うのだから、伊達食う虫も好き好きって事なのかなぁ。

「…今回は引く。でも大豆島先輩」
「何?」
「テクは俺のが上だから、一度噛まれたら戻れなくなるかもよ?芙露先輩エロい事は初心者だから」
「なっ!何言って」
「だったら守るさ。芙露君には噛みつかせない」
「おーおー勇ましいこって。じゃあな先輩方、よい放課後をー」

ニヤニヤ笑いながら前は去っていく。多分自室に戻るつもりなんだろう。
それにしても…エロい事初心者ってなんだよ…そりゃ、経験豊富って訳じゃないけどさ。

「…芙露君」
「はひっ!なんでしょう藍唯さん!」
「守るから、絶対に」

真剣な声で、真剣な顔で、藍唯さんは俺に誓う。
…何時もは気弱なくせに、こういうときは本当にカッコいいんだから。
だから、好きなんだけど。

「…守られても、良いですかね」
「うん」
「じゃあ、お願いします」
「こちらこそ」

愛しい貴方に触れるだけのキス。
廊下だなんて、誰かに見られるかもしれない場所。
でも、今日は猫の日改め誘拐の日。
どうせ誰も、見てやしない。

「…あの、芙露君」
「はい?」
「猫耳その…か、可愛いね」
「猫耳が、ですか?」
「いや!猫耳つけた芙露君が可愛いんだよ!」
「誘拐します?」
「誘拐…されたい?」
「貴方になら」

あ、両者合意の上じゃ誘拐じゃなくて逃避行?
寧ろ俺が野良猫で、藍唯さんに拾われた?
…それはそれで悪くないかな、なんてね。



ここは灘城学園、風紀委員会本部。
一人の青年がデスクに向かい書類とにらめっこしていた。
委員は見回りにより不在、委員長に至っては嬉々として騒ぎを収めに行ってしまった。
風紀委員長、御堂富貴は三度の飯よりケンカ好きな男であるので、最早年中行事なのだが。

「だからって俺一人にこの量捌けって言うなよな…」

と呟いたのは風紀副委員長、大豆島藍唯その人だ。
灘城学園の風紀委員会は生徒会ほどではないが仕事が多い。
特に今年度は新設クラス(加害者)と既存クラス(被害者)の(一方的な)衝突が多いため、学園の治安維持が目的である風紀委員会はその対処にてんやわんやなのである。

「失礼します。大豆島先輩いらっしゃいますか…?」
「芙露君?どうしたの?」

控えめなノックの音がして、藍唯が返事を返す。
すると、ドアの向こうから一人の生徒が顔を出した。
高尾芙露。この学園の二年生で、藍唯の恋人である。

「いや、その…お一人ですか?」
「悲しいことにね…」
「ダメですよ手綱離しちゃ…」

とダメ出しする顔は呆れるよりも哀れみよりも、しかたないなぁといった表情だ。
その中には愛しさや慈しみが含まれている。

「面目無いです…」
「俺は藍唯さんのそういうとこが好きなんで、別にいいんですけど」

キュン
藍唯の中でそんな音がした。

「それに、今はそっちの方が好都合というか…」

俺は何時も二人きりの方が好都合だ!と藍唯は心の中で叫んだ。
いつもは富貴7割、芙露の関係者2割、学園内でのトラブル1割に邪魔されるのが通例で、藍唯の堪忍袋の緒はそろそろ切れそうだったりする。
しかし、切れたところで大して怖くないとは富貴の言だ。
根本が善人である藍唯にとって怒りは常に蔑ろにされるものである。

「…ちょうどキリの良いとこまで終わったから、休憩しようと思ってたんだ。芙露君、何か甘いもの持ってないかな?」
「は、はい!」

芙露の手にある可愛らしくラッピングされたものに気がつき、藍唯はソファに座るよう促す。
2月14日、バレンタインデー。
生徒の間でも人気のある富貴は大量のチョコレートを貰っている。
その処理を手伝わされるのは風紀委員会一同。今日もその手伝いを眺めていた藍唯にはピンときたのだ。

その手にある物は、俺に作ってくれた…

「ヤバい…凄く嬉しい…」

コーヒーを淹れながら藍唯は緩む頬を抑えていた。抑えきれていない。
端から見たらただの変質者だ。

「藍唯さん、手伝いましょうか?」
「あ、あぁいいよもう持っていくから。芙露君は座ってて?」

コーヒーを持ってソファまで移動する。
芙露は定位置に座っていた。
三人がけソファの端っこ。遠慮するような詰め方に、藍唯は思わず苦笑いを溢す。

「もっと真ん中に来ても良いのに」
「え?でも…」
「そっち寄ってもいい?」
「わわ…!」

テーブルにはクッキーとコーヒー二つ。
藍唯は早速クッキーを食べることにした。

「手作り?」
「はい…その、キッドとかじゃなくて、小麦粉とかから」
「そうなの?凄いね」
「キッドだとチョコレートが…」
「あ…そっか、ゴメンね」

藍唯はあまりチョコレートを食べない。バレンタインにもチョコレートだけは遠慮している。
去年それを知らずにチョコレートを渡してしまった芙露は大変な目に遭ってしまったのだが、それはまた別の話。

「そんな…!良いんです!俺は全然手間じゃないですから。それに…」
「それに?」
「俺の気持ちがよりいっそ藍唯さんに伝わる気がするんです。大好きって気持ちが、いっぱい」

ドキューン!
藍唯の心は完全に撃ち抜かれた。
衝動的に芙露の唇に自分の唇を重ねる。
触れるだけのキスを何度かした後、ディープキス。
ふと、チョコレートの味がした。
藍唯は芙露の唇をたっぷり堪能した後、名残惜しそうに唇を離した。

「ねぇ…芙露君…」
「ぁ…はい…?」
「…チョコレート、食べたでしょ?」
「あっ…さっきの…」

藍唯がコーヒーを淹れている間、芙露は友人から貰ったチョコレートを食べていたのだ。
もう口には残ってないからと油断していたらこの有り様。芙露は此処に来て後悔した。

藍唯がチョコレートを食べないのは、彼がチョコレート嫌いだから―ではない。
寧ろ藍唯はチョコレートが好きだ。甘いものの中でも一等に好きな物である。

大豆島藍唯は善人である。
善人であるからこそ、溜め込みやすい。
そんな藍唯のストッパーを破壊するのが、好物であるチョコレートだった。

簡単に言うと、藍唯はチョコレートを食べるとエロくなる。
言動行動、それに伴い雰囲気も。

それは普段から抑えている芙露への欲求が大半なのだが、藍唯が抱えるストレスも含まれていたりする。
芙露はそれを分かっているから、何も言わずされるがままだ。

ただ、ここは風紀委員会本部。公衆の場だ。誰が何時帰ってくるかわからない。
せめて藍唯の部屋に!と芙露は願った。
そんな願いも虚しく、藍唯は芙露をソファに押し倒す。芙露は慌てて藍唯を制した。
藍唯は実に不満そうな顔である。

「芙露君…」
「お、俺、部屋が良いです。藍唯さんの部屋…」
「…………」
「あ、藍唯さん?」

何かを考えているらしい藍唯に、芙露は混乱した。
嫌われた、だろうか?と不安ばかりが芙露を支配する。
芙露はその家庭環境から甘え下手のため、ワガママを言うことは苦手だ。
小さなワガママでも、芙露にとっては大きなワガママなのである。

「加減できないよ?」
「え?」

芙露は予想できなかった答えに間の抜けた声を上げてしまう。藍唯はそんな芙露を愛しそうに抱きしめた。

「遠慮無く頂いちゃうから、多分明日は学校無理だよ?」
「えぇ!?」
「俺はそれでもオッケーなんだけど、寧ろ望み通りの展開なんだけど…良いの?」

何時もの藍唯なら絶対に言わないだろう台詞に顔を真っ赤にする芙露。
真っ赤な顔のまま藍唯を抱き締め返し、それをもって藍唯への返事とした。





―媚薬味のバレンタインデーキス―
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