寒いから、手を繋ごう。
そう言い出したのは彼だった。
俺は何の気なしに了承して、右手を差し出した。
「握手するときは右手を出すのが一般的な礼儀らしいよ」
「そうなんだ」
「利き手を差し出すことで、敵意が無いことをアピールするんだって」
「面白いね、左手が利き手だったり両手使える人もいるのに」
「昔は右利きが主流だったんだよ、多分」
不思議なことだなって思った。
どうして右利きが多いのかな…?
「かく言う俺らだって右利きだろ?」
「そうだったね」
クスクス笑いながら寒い帰路を歩く。
空は冬の澄んだ空気で青く、穏やかで薄い雲で飾られていた。
…ふと、頬に冷たい何かが落ちる。
雪、だった。
「風花だ。」
「風花?」
「山に積もった雪が、風に運ばれて下まで降りてくることを風花って言うらしいよ」
「…君はなんでも知ってるね」
「…そんなこと、ないよ」
プイッとそっぽ向く彼の耳は赤く、耳、赤いよ?と言うと「寒いから」と答えてきた。
照れ隠し、だと良いな。
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