「お前なんか生まれてこなきゃ良かったんだ。」
12月11日、泉は阿部にそう言った。
「泉…。」
「そしたら、こんな思いせずに済んだ。」
2人しかいない更衣室で、泉は呟く様に口を開く。
「俺は阿部が嫌いだ。」
「…知ってる。」
「三橋にうぜぇ位世話焼いたりするところも、数学得意な所も、たれ目も、声も、野球に真剣な所も、榛名を忘れられなくて泣いている所も、嫌いだ。」
その口から止めどなく零れる言葉は、真っ直ぐ阿部に向かっていた。
「でも、好きだ。」
「…っ…!」
「そうやって赤くなるのも嫌いな筈なのに、三橋にうぜぇ位世話焼いたりする所も、数学得意な所も、たれ目も、声も、野球に真剣な所も、榛名を忘れられなくて泣いている所も、俺の好きに反応して赤くなる所も、愛してる。」
そう言って泉は、阿部に触れるだけのキスをした。
「お前がいなきゃ、こんな思いせずに済んだ。お前がいなかったら、こんな気持ちを知らずに終わっていた。」
こんな幸せな気持ちは、後にも先にもねぇな。と泉は独り言のように呟く。
そして泉は、阿部の体に手を回し、引き寄せた。
「好きだよ。阿部。」
だから、産まれてくれてありがとな。と泉は阿部に耳打ちした。
(矛盾を孕んだ俺とお前の関係は、きっと捻切れるまでこのままなのだろうと、漠然と感じた。)
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泉は辛辣だけど阿部が大好きだといいなっ!
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